恋と金又名The Buried Treasure
辺鄙な山奥の鉱泉旅館河田屋には、三十一歳になる独身の女主人ゆきと女中おいくの二人しかいない。ある日、ゆきが猪撃ちから戻ると珍しく泊り客がたてこんでいて、ゆきに縁談を持って来た伯母おたみなど相手にされない忙しさ。泊り客というのは、到着早々シャベルを担いで出かける北原、都築の二人組、作家と自称する藤堂とお供の島崎、三人だけの旅役者一座、妙に沈んだ若い矢沢夫婦、それに地方回りの化粧品宣伝嬢椎名***と**晴子たちで、ゆきとおいくだけでは到底手が足りないとみて、***は気さくに手伝ってやるのだった。その夜、トランクを提げた藤堂と島崎が闇に消えたのと入れちがいに、ミシンのセールスマン橋本と三人の学生が着いた。橋本は恋人の***を追って来たらしい。翌朝、駐在の尾関巡査が来て矢沢夫婦の保護願いが出ていると告げるが、その頃当の心中未遂夫婦は滝の近くで金塊入りのトラン...