稲妻奉行
薩摩藩士達は、己の藩に関する犯罪、訴訟が、すべて問注所というところで裁きをつけ、幕府の役人では手出しが出来ぬことをいいことにして、目に余る所業を重ねていた。浅草寺境内で狼籍の限りをつくした一薩摩藩士を捕えた南町奉行駿河守は、みせしめとその藩士を独断で処刑した。が薩摩藩の強硬な申入れに、水野老中も抗しきれず、駿河守は**となった。与力筆頭の大岡忠右衛門は、駿河守の無念を晴らすことを決意した。その頃、薩摩藩では姫君が関白家へ輿入れすることになっていた。そして、その折、土産品として持参する秘蔵の名剣安綱の手入れを刀剣屋相模屋に依頼した。相模屋丹右衛門は、薩摩藩留守居役の佐藤松太夫を料亭に招き、倅の丹七に饗応させた。が、丹七に恋こがれる芸者、おみよに横恋慕した松太夫は、おみよが自分になびかないのを見て逆上、丁度来合せた相模屋の商売敵、三河屋喜八の甘言と金に目...