献身又名Her Devotion
東京へ向う上り特急の中で、柏木啓は瀬川朝子を知った。朝子の美しさは深く柏木の心を打った。柏木にとって朝子との二度目の邂逅は思いがけないことから始った。柏木の先代が恩義を受けたという一条家の当主、一条英信の身柄を頼みに来たのが朝子だった。英信は麻薬取扱いの容疑で拘置され、朝子はその妾だった。英信には、その他、故郷には妻と妾の房子がいた。東京での朝子は、朝明というバーを経営していた。柏木は、他目から見れば無償とも思える愛情を英信にひたむきに傾ける朝子を知って、彼女に愛情を感じるようになった。彼は朝明にも現れて、朝子への激しい愛情を告白した。英信の麻薬容疑は幸いに、執行猶予となったものの、刑***に関りあったことを却って自分の強みにもして、新しいブロック工場建設の責任者という地位を獲得した。新工場は東京にあり、新しい地位は房子の世話であった。妻子を先に上京...