新婚日記 恥しい夢
三郎は電々公社の職員で今度、東京へ転勤するのを機会に恋人の千枝子と結婚、式後直ちに熊本から上京した。東京は住宅難だが、三郎の恩師白木博士が渡米するので、その留守番を仰せつかり心配はなかった。しかも電化設備の整った文化住宅。三郎は商売柄、電話を遊ばせておくのは勿体ないから近所の人に利用させようと到着の日に「電話ご利用下さい」の貼紙を玄関に出した。**第一夜があけ、二人が起きようとした時、表の戸を激しく叩く音がした。驚いて玄関に出ると、そこには近所の人が電話を借りようと大勢並んでいた。それ以来、二人は毎日呼出し電話で夜もおちおち眠れない始末。そんなある日、千枝子の先輩で女学校の寄宿舎の舎監をしている矢部女史が訪ねて来た。寄宿舎でホームシックにかかった生徒を、家庭的な二人の家に置いて治して欲しいと云うのだ。無理矢理エリ子を押しつけられた二人は、**気分も味...